お父さんは誰?④まとめ

こんにちは。またまたご無沙汰してしまいました。
前回まで3回に渡ってお話ししてきた、民法第772条の改正問題について、本日はポイントをまとめて締めくくりたいと思います。

今回改正が検討されているのは、
民法第772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
この、下線の部分です。
そして、文言が多少変わることはあるにしても、内容としては、前段の婚姻の成立の日から200日を経過した後 については、削除の方向で検討されているのに対し、後段の婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子 についてはそのまま維持され、代わりに、子が出生する時点で母が再婚している場合には、再婚した夫の子と推定する、という規定を盛り込む案が検討されているようです。
但し、何らかの事情で子の出生時に子の生物学上の父と再婚できない場合なども想定される以上、この改正案だけでは無戸籍問題を根本から解消するには至りません。

もう一つ、父と子との嫡出関係を否認するための「嫡出否認の訴え」に関する条文(民法第774条、775条、777条)の改正も検討されています。
現行では嫡出推定を受ける子と父との嫡出関係の否認は、「父のみ」が、「子の出生を知ったときから1年以内」にしかすることが出来ません。
これは、子の父子関係を早期に安定させるという、子の利益のためなのですが、今まで見てきた第772条の問題を見ていても、現行のままでは無戸籍者を生じさせる大きな要因の一つになっていることが分かります。
今回、この「嫡出否認の訴え」に関して改正が検討されているポイントとして、
・子の否認権
・母の否認権(子の代理人として、固有の利益として)
・出訴期間が長くなる(3年、5年など)
などがあります。
ですので、もし現在検討されている内容で改正された第772条でも手当てできなかった(例えば離婚から300日以内に子を出産したが、その当時まだ母が子の実の父と再婚していなかった、など)場合、母が子を代理して、あるいは母個人の利益のために嫡出が否認できるなら、無戸籍者の解消につながるかもしれません。
また父にとっても、例えば実は母が自分以外の男との間に懐胎した子を、自分との子と偽って届け出たとしても、否認権の行使期間が出生を知った時から1年以内では、なかなかその権利を行使するのは困難でしたが、期間が延びることにより、機会が拡がることで、利益につながります。

ここまで、簡単に見てまいりましたが、実はこのあたりの改正は、今回紹介できなかったようなその他の問題点も絡んでいます(例えば精子提供による生殖補助医療により生まれた子の場合、など)。
なかなかすべての問題点を完全に解決するような条文整備というのは困難だと思いますが、少しでも無戸籍者問題の解消につながるような改正を期待しています。