相続が変わる②配偶者の生活への配慮1

こんにちは。
さて、前回のブログで「配偶者の生活への配慮を盛り込んで相続法制を見直すべき、という問題提起がなされた」と書きました。
では、実際に「配偶者の生活への配慮」という観点で、どのような改正がなされたのかをお話ししたいと思います。

1. 持戻し免除の意思表示の推定(第903条第4項)
父、母、長男、長女の家族を例にしてお話します。
被相続人(父)の生前に、共同相続人のうちの一人(長女)が、大きな財産(現金2,500万円だとします)を贈与されていた、という場合、その残りの財産(居住用不動産(5,000万円の価値)と現金2,500万円だとします)を、贈与を受けた相続人も含めて法定相続人みんな(母、長男、贈与を受けた長女の3人)で分けるというのは、ちょっと不公平な感じがしますよね。長女はもう十分もらっているのだから、残りは他の相続人で分けさせて!と思っても不思議ではありません。
そこで、民法には「特別受益の持戻し」という規定があり、上記の例で言うと、父が亡くなったときに現実に存在する遺産としては、居住用不動産(5,000万円の価値)、現金2,500万円ですが、ここに既に長女が贈与を受けていた2,500万円を加えた総額が遺産であるとして、その上でそれぞれの相続分で割ることを言います。単純に法定相続分で考えると、
 母(父の配偶者)=5,000万+2,500万+2,500万×2/4-0=5,000万円
 長男      =5,000万+2,500万+2,500万×1/4-0=2,500万円
 長女      =5,000万+2,500万+2,500万×1/4-2,500万=0円
長女は既に現金2,500万円、この場合ちょうど相続分に該当する分を受け取っているので、相続に当たってはもうもらえるものはない、ということになります。

相続において、特別受益者がいる場合、この「持戻し」をすることが原則ですが、例外的に被相続人(この場合父)が、「持戻ししなくていいよ」と意思表示した場合、持戻しは「免除」となり、上記の相続財産の計算時には考慮しなくてよいことになります。これを「持戻し免除の意思表示」といいます。

 そしてようやく本題です。
 「婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは、被相続人による持戻しの免除の意思表示があったものと推定する。」という内容の規定が新設されました。
 つまり、20年以上連れ添った夫婦の、例えば夫が妻に対し、住んでいた不動産を生前贈与または遺贈する、とした場合は、別途夫が「持戻ししなくていいよ。」という意思表示をしなくても、相続時にこの分の価値(上記の例で言えば計5,000万円)を持戻す必要がなく、残りの財産を妻も含めてみんなで仲良く分けていいですよ、という制度なのです。
 通常の相続(原則=持戻し、例外=免除)とは異なり、持戻しをしないことが原則になります。
 持戻しの原則のままですと、上記計算例で考えると、母の相続分は5,000万円。居住用不動産の価値と等しいので、もう居住用不動産をもらっているのだから、現金はもらえない、となってしまいます。住むところはあるけれど、日々の生活費に困る、というようなことがありえたわけですね。
 持戻し免除を原則としたことで、住むところを確保し、なおかつその他の財産も受け取ることができる、ということになりました。
 これが、配偶者の生活を手厚く保護しようという規定の一つです。
 長くなりましたので、今日はこのへんで。