相続が変わる③法務局の遺言書保管制度

こんにちは。
今日から数回、遺言についてのお話をしていきたいと思います。
まずは、今年の7月10日から開始された、「自筆証書遺言の保管制度」についてお話ししたいと思います。

遺言には、法律で定められたいくつかの形式があります。その中で、遺言者が通常の状態においてする遺言は、大きく分けて2種類あります。
一つは、自筆証書遺言、もう一つは公正証書遺言です。
自筆証書遺言とは、その名の通り、「自」ら「筆」記する遺言です。一部(財産目録)を除いて、ワープロ作成も禁じられます。あくまでも、自分でペンで文字を書くことが求められます。
そして、何を書いてもいい、適当に治してもいい、というわけではなく、法律で定められた決まりがあります。
最近は、遺言の書き方のような書籍も売っているので、参考にされても良いですし、我々専門家にご相談されると更に良いかと思います。
この自筆証書遺言、いいところは、自分で書くので費用がかからないこと。さしずめ紙とペンと封筒代くらいでしょうか。あとは参考書籍代ですとか、専門家への相談料もそこまでは費用がかからないと思います。
そうして出来上がった遺言書は、金庫などにしまわれて、相続が開始した後に相続人によって発見される、というのが自筆証書遺言の通常の場合の流れでした。

しかし、この7月10日から、自筆証書遺言を書いた後、その遺言書を法務局で保管してもらう制度ができました。
法務局で保管してもらうことによって、誰かに見られたり、場合によっては改ざんなどがなされてしまう心配がありません。
もちろん、法務局など信じられん!自分で金庫に保管する!ということも可能ですが、その場合には相続開始後に裁判所での「検認手続」が必要になります。
この「検認手続」は、相続開始後に自筆証書遺言が発見されたときの状態(厳密には裁判所に持ち込まれたときの状態)を裁判所で確認する、いわば証拠保全手続きのことです。これを経ることによって、その後の改ざんを防ぐことができるのです。
ただ、裁判所に申し立てて、相続人にお手紙が届き、裁判所に集まって行う手続きなので、どうしても相続人の方の手間になります。
自筆証書遺言を遺される方が法務局での保管制度を利用すれば、相続発生後に、相続人にこのような手間をかける必要はなくなります。
保管の手数料は、3,900円で、住所地、本籍地、不動産所在地のいずれかの法務局(ただし出張所では取り扱っていません)で保管してもらえます。
一度法務局で保管してもらっても、その後やはり気が変わったときは、手数料を支払えば内容を撤回することも可能です。
ただし、郵送は不可、代理人による提出も認められず、遺言者本人が法務局へ出頭する必要があります。法務局で、本人確認、間違いなく本人が自分で書いたか、形式に誤りはないかの確認をするからです。
ですので、意思能力や体力に問題がなく、遺言を遺しておきたい、という方には、費用も安く済みますので、お勧めの方法かと思います。
では、そうでない場合は?例えば体に麻痺があり、自筆することが極めて困難であるとか、意思能力ははっきりしているが、身体的に問題があり寝たきりであるとか。
次回、このような場合にでも遺言を遺せる方法、公正証書遺言についてお話したいと思います。